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【初心者向け】主成分分析(PCA)についてわかりやすく解説

こんにちは!ぼりたそです!

今回はデータ分析では基本とも言える主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)について初学者の方でもわかりやすく説明していきたいと思います。

この記事は以下のポイントでまとめています。

Point主成分分析とは?主成分分析のアルゴリズムPythonで実行オススメ書籍

また、CSVファイルを入力するだけでPCAが実行できるコードも公開しているので、興味のある方はご参照ください。

合わせて読みたい【Pythonコード付き】CSVを入力するだけで主成分分析(PCA)を実行この記事はCSVを入力するだけで主成分分析が実行できるコードの説明をしています。具体的には「PCAとは?」、「実装コードの仕組み」、「実装コードとその説明」について解説しています。boritaso-blog.com2024.10.20

それでは順に解説していきます。

スポンサーリンク 主成分分析(PCA)とは?主成分分析のアルゴリズムデータの標準化共分散行列の計算固有値と固有ベクトルの計算主成分の選択番外編:主成分の解釈Pythonで実行オススメ書籍終わりに 主成分分析(PCA)とは?

まずは主成分分析について概要を説明していきます。

主成分分析(PCA)は、データの次元を削減し、データの可視化や解析をより簡潔にする手法です。多くの変数を持つデータを、より少ない数の「主成分」と呼ばれる新しい変数に変換して、データの本質的な情報を保ちながら、簡潔に表現することができます。

例えば、下図のように「国語」、「数学」、「理科」、「社会」、「英語」の5科目のテストのスコアデータがあるとします。

これを理系科目=「数学」+「理科」+「英語」、文系科目=「国語」+「社会」+「英語」とすることで5次元あったデータを二次元に圧縮することができます。この次元削減によりこの生徒はざっくり理系科目が得意な傾向にあることがわかります。

PCAはこのように元のデータからなるべく情報損失を抑えつつ、次元削減を行うことでデータの解釈や可視化を簡潔にしてくれるのです。

また、PCAについて上記で紹介した以外のメリット、さらにはデメリットも記載いたします。きちんとデメリットも理解した上で使用できるようになりたいですね。

■メリット

データの可視化、解析が容易PCAの最大の利点は、データの次元(変数の数)を削減できることです。元のデータの複雑さを維持しながら、少数の主成分に変換することで、データの可視化や解析が簡単になります。ノイズ除去PCAは、データの中で重要ではない(分散が小さい)成分を除外することができるため、ノイズを削減してデータの本質的な部分だけを抽出できます。これにより、機械学習モデルのパフォーマンスが向上する場合があります。相関を捉えるPCAは、元の変数同士の相関関係を主成分に集約します。これにより、データの潜在的な構造やパターンが見つけやすくなります。また、多重共線性がある変数があった場合に一つの主成分に集約できるので、機械学習モデルのパフォーマンス向上につながる可能性があります。

■デメリット

元のデータの解釈が難しくなるPCAによって得られる主成分は、元の変数が混ざり合った新しい変数となります。そのため、主成分自体が何を意味するか解釈が難しくなる場合が多いです。データの情報が失われる可能性次元削減を行う際、どうしても一部の情報が失われます。特に少数の主成分でデータを表現する場合、元のデータが持っていた詳細な情報が失われ、精度が下がる可能性があります。主成分分析のアルゴリズム

次に主成分分析(PCA)のアルゴリズムについて解説していきます。

PCAは基本的に以下の手順で行われます。

データの標準化共分散行列の計算固有値と固有ベクトルの計算主成分の選択

順に説明していきます。

データの標準化

まずはデータの標準化についてです。

PCAを実行する際は基本的にデータの標準化をしなければいけません。標準化とは、変数ごとに平均を0、標準偏差を1に変換することを言います。

変数のスケールが異なる場合、例えば、身長[m]、年収[万円]のデータがあったとします。仮にそれぞれ数値が1増えた場合、身長が1m増えるとの年収が1万円増えるのでは訳が違いますよね。

こういったスケールの違いはPCAの結果に影響を与える可能性があるため、各変数を同じスケールに揃える必要があるのです。

共分散行列の計算

次に共分散行列の計算について説明します。

まず、例として標準化した2変数(X1,X2)データが以下のような二次元グラフで表せるとします。

共分散行列を計算するということは、この変数同士がどれくらい相関しているか、どのくらいデータが分散しているかを計算することになります。

ちなみに共分散行列は以下のような行列式で表すことができます。

$$\mathbf{C} = \begin{pmatrix}\text{Cov}(X_1, X_1) & \text{Cov}(X_1, X_2) \\\text{Cov}(X_2, X_1) & \text{Cov}(X_2, X_2)\end{pmatrix}$$

ここで $text{Cov}(X_i, X_j)$ は $X_i$ , $X_j$ の共分散であり、以下の式で求めることができます。

$$\text{Cov}(X_i, X_j) = \frac{1}{N} \sum_{k=1}^{N} (X_i^{(k)} – \mu_i)(X_j^{(k)} – \mu_j)$$

$N$ はデータ点数$ X_i^{(k)}$ は $i$ 番目の変数の $k$ 番目のデータポイント$u_i$ は $i$ 番目の変数の平均値を表します。

この数式を使うことで、各変数間の共分散を求め、共分散行列を作成します。

固有値と固有ベクトルの計算

共分散行列を計算した後、次に行うのが 固有値と固有ベクトル の計算です。このステップで、データの分散を最もよく説明する「方向」(主成分)を見つけます。

固有ベクトルは、データの分散が最大となる方向(軸)を示します。データのパターンを捉えるために、新しい基準軸(主成分)を作り出すものです。

固有値は、各固有ベクトルがどれだけのデータの分散を説明しているかを示す大きさです。大きな固有値ほど、その固有ベクトル(主成分)がデータの分散をよく説明していることを意味します。

この固有ベクトルと固有値から主成分が決まり、先ほどの図で表すと次のようになるかと思います。

固有値と固有ベクトルは、次の式に従って定義されます

$$\mathbf{C} \mathbf{v} = \lambda \mathbf{v}$$

ここで、$C$ は共分散行列、$v$ は固有ベクトル、$\lambda$ は固有値です。

この式は、共分散行列 $C$ が固有ベクトル $v$ をかけると、その結果は固有ベクトルの長さが $\lambda$ 倍されたものと同じであることを意味しています。この式を解くことで、データの最も重要な方向(固有ベクトル)と、その方向の重要度(固有値)が求まります。

主成分の選択

PCAにおいて主成分を選択することは重要であり、次元削減やデータの要約を行うための鍵となります。ここでは、主成分の選択方法やその意義について詳しく説明します。

PCAでは第二主成分以降も先ほど説明した手順で順番に計算します。下の説明のように第一主成分以降はそれ以前の主成分に直行するように生成されます。

主成分同士が直行することは互いに独立であることを示し、異なる情報を持った軸になることを意味します。逆にほとんど同じ方向の主成分は同じような情報しか表現することができず、あまり意味がないことになります。

第1主成分 (PC1):データの分散が最大になる方向を表し、最も多くの分散を説明します。第2主成分 (PC2):第1主成分に直交する(90度の角度で独立している)方向で、残りの分散を最大限に説明します。以降の主成分:それぞれ前の主成分に直交する方向で、データの分散を説明する順番に計算されます。

さて本題に戻りますが、新たに生成した第一〜第n主成分の中でもどの主成分を使用するかがが重要になってきます。

少ない数の主成分を使用することで次元削減による効果が大きくなりますが、情報の損失も大きくなってしまい、結果として精度が低いモデルになってしまうリスクがあります。その逆も同様です。

そこで、主成分の選択方法としてよく使用されるのが累積寄与率を基準にした手法です。

この方法では、各主成分がデータの分散をどれだけ説明しているかを示す「寄与率」と、それを累積した「累積寄与率」を計算し、それを基準にして使用する主成分の数を決定します。

寄与率は各主成分がデータ全体の分散をどの程度説明しているかを表します。第1主成分から順に、データの分散を多く説明する方向に沿って計算されます。

ここで、$\lambda_j$​は第$j$主成分の固有値で、$\sum_{j=1}^{n} \lambda_j$​は全ての固有値の合計です。

$$\text{寄与率} = \frac{\lambda_i}{\sum_{j=1}^{n} \lambda_j}$$

累積寄与率は主成分をいくつか選択したとき、それらの主成分がデータ全体の分散をどれだけ説明しているかを表します。累積的に寄与率を加算していくことで得られます。この累積寄与率が高いほど、選択した主成分が元のデータの情報をよく説明していることになります。

$$\text{累積寄与率} = \sum_{k=1}^{i} \text{寄与率}_k$$

この累積寄与率の閾値を通常80%から90%に設定することが多いです。

例えば、PCAにより以下のような主成分に対してその寄与率と累積寄与率が得られたとします。

主成分寄与率累積寄与率第一主成分5050第二主成分3080第三主成分1090第四主成分595第五主成分398第六主成分2100

累積寄与率が90%に達するまでの主成分を選択すると、第3主成分までを使用することになります。

累積寄与率は、データの情報量を損なわないように次元を削減するための指標として非常に有用です。主成分分析を効果的に行うために、累積寄与率の基準をしっかりと設定することが大切です。

主成分を選択したら後はその主成分を基にデータを反映すれば主成分分析は完了です。

番外編:主成分の解釈

PCAについて、次元削減によって少ない次元でデータを表現することができたとして、その主成分にどのような意味があるかを解釈する必要があります。

よく使用されるのは主成分負荷量であり、元の変数が各主成分にどの程度寄与しているかを示す指標です。

主成分に対して負荷量の絶対値が大きい変数ほど、その主成分に対して強く影響を与えると解釈できます。また、負荷量が正の場合、その変数は主成分の増加方向に寄与します。一方、負荷量が負の場合、その変数は主成分の減少方向に寄与します。

例えば、下のような主成分に対して元の変数の負荷量が得られたとします。

変数名第一主成分第二主成分身長0.60.1体重0.50.2年齢0.10.8血圧0.20.7

第一主成分 は、身長と体重に大きな荷重がついており、「身体の大きさ」を表している可能性が高いです。一方で第二主成分 は、年齢と血圧に大きな荷重がついているため、「健康状態や加齢に関連する要因」を表していると解釈できます。

このように負荷量を確認することで、主成分がデータのどの側面を表しているのかを理解し、データの構造を効果的に把握できます。

スポンサーリンク Pythonで実行

それでは最後にPythonを使用してPCAを実行してみましょう。

今回はボストンの住宅価格のデータを使用してPCAを実行してみました。

主成分の数は「累積寄与率が80%を超える最小の数」という条件にして選択しています。

実際のPythonコードは以下の通りです。

import numpy as npimport pandas as pdimport matplotlib.pyplot as pltfrom sklearn.decomposition import PCAfrom sklearn.preprocessing import StandardScalerfrom sklearn.datasets import fetch_openml# ボストンデータのロードboston = fetch_openml(name='boston', version=1, as_frame=True)df = boston.data# 特徴量の確認print("データの特徴量:\n", df.head())# データの標準化scaler = StandardScaler()df_scaled = scaler.fit_transform(df)# PCAを適用して累積寄与率を計算pca_temp = PCA()pca_temp.fit(df_scaled)# 寄与率と累積寄与率の計算explained_variance_ratio = pca_temp.explained_variance_ratio_cumulative_variance_ratio = np.cumsum(explained_variance_ratio)# 累積寄与率が80%を超える最小の主成分数を選択n_components = np.argmax(cumulative_variance_ratio >= 0.8) + 1print(f"\n累積寄与率80%に達するための主成分数: {n_components}")# 選択した主成分数でPCAを再実行pca = PCA(n_components=n_components)pca_result = pca.fit_transform(df_scaled)# 結果をデータフレームに変換pca_df = pd.DataFrame(pca_result, columns=[f'Principal Component {i+1}' for i in range(n_components)])# 主成分負荷量components = pca.components_loadings_df = pd.DataFrame(components.T, columns=[f'Principal Component {i+1}' for i in range(n_components)], index=df.columns)print("\n主成分負荷量:\n", loadings_df)# 寄与率と累積寄与率のグラフを作成plt.figure(figsize=(10, 6))plt.bar(range(1, len(explained_variance_ratio) + 1), explained_variance_ratio, alpha=0.5, align='center', label='Individual explained variance')plt.step(range(1, len(cumulative_variance_ratio) + 1), cumulative_variance_ratio, where='mid', label='Cumulative explained variance', color='red')plt.xlabel('Principal Component Index')plt.ylabel('Explained Variance Ratio')plt.title('Explained Variance Ratio and Cumulative Variance')plt.legend(loc='best')plt.tight_layout()plt.show()#plt.savefig('pca.png')

使用した変数13個に対して生成した主成分13個の寄与率と累積寄与率が以下の通りになります。第一主成分が50%近い寄与率を示しており、それ以降の主成分はそこまで寄与していないようですね。

今回、累積寄与率80%を超える最小の数としているので使用される主成分は5個となります。元が13個の変数でしたので、かなり次元削減できたのではないでしょうか。

また、負荷量の計算もできるようにしてあるので、興味のある方は各主成分がどのような特徴を持っているか確認してみてもいいかもしれません。

オススメ書籍

最後にオススメの書籍についてご紹介いたします。

■Pythonによるあたらしいデータ分析の教科書

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本書は今回解説した主成分分析(PCA)も含め、データ分析の手法を幅広く学び、それをPythonで実行できるようになりたい人には非常にオススメの書籍となっております。

読者のレベルとしてはPythonについてある程度理解できる初学者〜中級者向けの書籍となっています。具体的にはPythonの公式チュートリアルを読んで理解できるレベルだそうです。

この書籍の推しポイントは以下の通りです。

数学の基礎から学べる基礎的な数学の基礎的な解説も含まれており、数式だけ記載されているのではなく、式にどのような意味があるのかまでしっかりと解説されています。主要なPythonライブラリの解説データ分析に必要なPythonライブラリ(NumPy, pandas, Matplotlib, scikit-learn)について基本的な使い方が解説されています。各種データ分析手法が学べる回帰分析をはじめ、クラスタリングなどの分類問題や画像処理まで幅広いデータ分析手法を学ぶことができます。

その他にも読者の立場に合わせたオススメの参考書がございますので、興味のある方は以下の記事をご参考いただければと思います。

合わせて読みたい【オススメ】データサイエンス・データ分析の参考書3選この記事はデータサイエンス・データ分析の参考書3選について紹介しています。具体的には「Python2年生データ分析の仕組み」、「Pythonによるデータ分析の教科書」、「Python 実践データ分析100本ノック」について紹介しています。boritaso-blog.com2024.10.06終わりに

以上が主成分分析の解説となります。次元削減の中でも基本となる手法ですのでぜひ使いこなしていきたいですね。また次元削減の手法はUMAPなど他にもありますので、また別の機会にご紹介できればと思います。

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