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FT

近赤外分光法は、シンプルな分析操作で、測定値が素早く得られる非破壊の分析です。複数の有機物成分を含むサンプルを前処理することなくそのまま測定し、得られたスペクトルデータをケモメトリクス(統計的解析手法)により処理することで多成分分析が行えます。近赤外(NIR)領域のスペクトルには、サンプルおよびその成分に関して、分子構造などの化学的情報や、粒子径などの物理的情報が含まれています。スペクトルによる材質判定もできますが、用途の多くは目的物の定量に応用されています。

こんな方におすすめです!

医薬、食品、飲料、化学、ポリマーなどの製造現場原料受入検査、最終製品管理で活躍非接触で簡単に目的成分の定量測定や同定をしたい

▼もくじ

近赤外分光について近赤外スペクトルの測定で抑えるポイント近赤外スペクトルによる定量分析まとめ近赤外分光について

近赤外光は通常、波長800~2,500 nm(波数12,500~4,000 cm-1)の領域の光を指し、ちょうど可視領域380~800 nmと中赤外領域2,500~25,000 nm(4,000~400 cm-1)の中間の領域になります。中赤外領域において、分子の結合の吸収バンドは、基本音、倍音、結合音が観測されますが、近赤外領域のそれは倍音と結合音のみが観測されます。近赤外領域の吸収バンドは、中赤外領域に比べてはるかに弱い、多数の倍音や結合音が重畳するのでバンドの帰属が容易でない、水素原子を含む官能基(OH、NH、CHなど)が現れる、などの特徴があります。

ポリスチレンの近赤外~中赤外領域のFT-NIRスペクトル

図1:ポリスチレンの近赤外~中赤外領域のFT-NIRスペクトル

近赤外領域は多数の倍音や結合音が重畳するため、バンドの帰属が容易でありませんが、官能基とその振動についてまとめたグループ振動数という考え方が、解析を行うときに役立ちます。

近赤外領域のグループ振動数(表示はおおよその波数位置)

図2:近赤外領域のグループ振動数(表示はおおよその波数位置)

近赤外スペクトルの測定で抑えるポイント

近赤外分光装置(FT-NIR)は幾つかのタイプが販売されています。大きくはフーリエ変換型(FT型)と分散型に分かれます。FT-NIRは下記のような利点があります。

利点

測定時間:近赤外波長領域を同時に測定するため、短時間でスペクトルが得られます。感度:全波長領域の光を同時に当てることで光のエネルギーを有効に使え、高い感度で測定できます。分解能:FT-NIRでは波長を分けるスリットを使わないため、SNの低下なしに波数分解能を上げることができます。

スペクトルを測定する際には、サンプルの性状に合った適切な手法を選ぶことが重要です。下記に近赤外分光でよく用いられる測定手法を示します。適切な条件を選ぶことで、スペクトルを測定する段階で定量分析のばらつきの原因となるノイズやベースラインのドリフトをできるだけ回避します。測定の段階で回避できない場合は、測定後のスペクトル前処理やスペクトル解析で対応できることもあります。

いろいろな測定手法

図3:いろいろな測定手法

近赤外スペクトルによる定量分析

定量分析を行うのにLambert-Beer則が適用できれば良いのですが、複数の吸収バンドが重畳したり、目的とする成分の数が増えたりした場合は、ケモメトリクス(統計的手法)による検量線作成が有用です。検量線作成のための定量モデルは、主成分回帰分析(PCR)や部分最小二乗回帰(PLS)が多く用いられています。これら定量モデルの作成・評価、定量分析するまでのワークフローを下記に示します。検量線作成のための定量モデル ワークフロー

まとめ

近赤外分光法は短時間かつ非破壊で測定でき、医薬、食品、飲料、化学、ポリマーなどの製造現場における品質管理や、原材料や製品の識別に広く活用されています。近赤外による分析の特長は次のようにまとめられます。

試料の前処理が不要で、ガラスや透明な包装材料を通して測定が可能非破壊分析であるため、そのままのサンプルが測定可能迅速で比較的精度の高い分析透過性の高い波長領域での分析光ファイバーによる濃度モニタリング 

現在は市販の装置やソフトウエアが充実し、近赤外分光法による測定や解析を簡単に行うことができます。光学や分光学などの原理、分析装置やデータ解析法などの手法、結果を解釈するための情報を増やすことで理解を深めることができます。

参考文献:近赤外分光法(尾崎幸洋編著、講談社)

Thermo Fisher Scientificが販売しているFT-NIRの詳細は下記をごらんください。

製品情報近赤外分光法の概要

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