※記事などの内容は2005年12月掲載時のものです
◇国内10大ニュース 1位・衆院選で自民圧勝、郵政民営化法成立 小泉純一郎首相が「改革の本丸」と位置づけた郵政民営化法案は、自民党内から造反が相次ぎ衆院を通過したものの、8月8日の参院本会議で否決された。首相は衆院を解散し、郵政民営化の是非を争点に据え、国民に信を問うた。衆院選で自民党執行部は造反議員を公認せず、党公認および無所属の「刺客」候補を送り込んだ。9月11日投開票の結果、都市の無党派層の支持を獲得した自民党は296議席を得て圧勝、公明党と合わせて327議席と与党が3分の2を上回った。郵政民営化法案は選挙後の特別国会に再提出され、衆参合わせてわずか6日間の審議でスピード成立した。 写真は、満面の笑みで当選確実者の花をつける小泉純一郎首相(中央)。左は武部勤幹事長、右は与謝野馨政調会長(東京・永田町の自民党本部)【時事通信社】 2位・JR福知山線で脱線事故、107人死亡 4月25日朝、JR福知山線塚口~尼崎間で、通勤・通学客らを乗せた上り快速電車が脱線。運転士を含む107人が死亡、555人が負傷し、JR史上最悪の惨事となった。カーブでの大幅な制限速度オーバーが直接の事故原因。列車自動停止装置(ATS)の不備や、余裕のないダイヤ編成、懲罰的な運転士教育なども背景として指摘された。JR西日本をめぐっては、危機意識に欠ける社員の不祥事も立て続けに発覚。6月19日、同線は55日ぶりに運転を再開したが、「安全最優先」の企業体質構築が重い課題となった。 写真は、救出作業に追われるJR福知山線の列車脱線現場(25日午前11時20分、兵庫・尼崎市)(時事通信社ヘリコプターから)【時事通信社】 3位・マンションなどの耐震偽装発覚 国土交通省は11月17日、首都圏のマンションなど21棟について、耐震強度などを示す構造計算書を姉歯建築設計事務所が偽造していたと発表した。その後、同事務所が関与した全国各地のマンションやホテルで強度不足が確認された。警視庁は、同省が建築基準法違反容疑で姉歯秀次・元一級建築士を告発したのを受け、千葉、神奈川両県警と合同で捜査本部を設置。姉歯元一級建築士は取引先から鉄筋を減らすよう圧力を受けたと証言し、責任の所在の解明が焦点となった。マンション住民は立ち退きを迫られ、政府は解体や建て替えなどに関する公的支援策を打ち出した。 写真は、国会の証人喚問で質問に答える姉歯秀次元1級建築士(右)【時事通信社】 4位・ライブドア、楽天がTV局株大量取得 ライブドアは2月8日、ニッポン放送株の35%を取得したと発表。一時は過半数の株式を買い占め、同放送が筆頭株主となるフジテレビ買収も画策したが、結局、全株式を手放す代わりにフジと資本・業務提携することで和解した。10月13日には楽天がTBS株の15%強を取得した上で経営統合を提案。だが、TBSの猛反発を招きこれをいったん撤回し、和解協議に入ることで11月30日に両社が合意し、一時休戦が成立した。 写真は、和解合意の記者会見をする(左から)ニッポン放送の亀渕昭信社長、ライブドアの堀江貴文社長、フジテレビの日枝久会長(東京都内のホテル)【時事通信社】 5位・全国でアスベスト禍 機械メーカー、クボタの旧神崎工場(兵庫県尼崎市)で6月、中皮腫などのアスベスト(石綿)健康被害が表面化。政府が実態調査を行った結果、771の教育関連施設や324病院などで粉じん飛散の恐れがあることが分かり、学校では夏休みを利用して対策工事が実施された。与党は石綿工場の周辺住民ら労災の枠組みで救済できない被害者の遺族に対し、特別弔慰金と葬祭料計300万円を支給することを決定。政府は、被害者救済のための財源を国、地方自治体に加え、全事業者が負担することを定めた石綿新法を来年の通常国会に提出する。 写真は、夏休みを利用してアスベスト(石綿)含有建材の撤去作業を進める作業員ら。防じん飛散防止処理剤で湿らせた建材をヘラを使って天井から削り落とす。プラスチックシートで覆われた室内を窓の外から撮影(東京・北区の小学校)【時事通信社】 6位・東証出来高バブル時上回る、システム・誤発注で混乱も 衆院選による与党の圧勝を受けて、東京株式市場は構造改革の進展を期待する買いが集まり、連日のように高値を更新。インターネットを通じた個人投資家の取引が急増し、12月9日の東証の売買代金は初めて4兆円を突破した。11月1日には東証のシステムダウンが半日に及んだにもかかわらず、取引開始後は急伸。みずほ証券による誤発注が起きた翌日も反発するなど、先高を期待する見方が広がった。一方で、株高は資産バブルが再燃する前兆ではないかと懸念する専門家も少なくない。 写真は、半日余に及ぶシステムダウンにもかかわらず、前日の米国株高や原油価格の急落を好感して幅広い業種に買いが広がり、日経平均株価が前日比261円36銭高の1万3867円86銭と続急伸した東証。10月4日に付けた年初来高値(1万3738円84銭)を更新し、2001年5月以来、約4年半ぶりの水準を回復した。出来高は17億9744万株【AFP=時事】 7位・愛知万博開催、目標上回る入場者数 愛知万博(愛称=愛・地球博)が3月25日から半年間、愛知県内の2会場で開催された。日本での「総合博」は1970年の大阪万博以来。日本を含む121カ国、4国際機関が参加した。テーマは「自然の叡智(えいち)」で、最新の環境技術が紹介された。シベリアの冷凍マンモスや企業パビリオンも人気を集め、入場者は目標の1500万人を大きく上回る2204万9544人に達した。開幕に先立って2月17日、同県常滑市沖に開港した中部国際空港の旅客数も順調に延び、「元気な中部」が目立つ1年になった。 写真は、愛知万博が開幕し、来場者で混雑する北ゲート付近(愛知県長久手町)【時事通信社】 8位・小泉首相の靖国参拝で中韓とあつれき 小泉純一郎首相は秋季例大祭初日の10月17日に靖国神社を参拝した。本殿に昇らず、記帳もしないなど私人としての参拝を強調し、中国や韓国に配慮する姿勢を見せた。しかし中国は「個別の指導者が間違った行動を取り、アジア人民の感情を傷つけている」(李肇星外相)と非難、韓国も「決して受け入れられない」(盧武鉉大統領)と反発した。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)や、12月の東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3首脳会議の際にも日中首脳会談は行われず、年内に予定されていた韓国大統領の訪日も見通しが立たない状況が続き、首脳交流は停滞した。 写真は、靖国神社の拝殿で手を合わせる小泉純一郎首相(東京・九段北)【時事通信社】 9位・小学女児殺害、高1の凶行で衝撃 11月22日、広島市安芸区で小学1年生の女児が殺され、遺体入り段ボール箱が放置される事件が発生。12月2日には、栃木県今市市の小1女児の他殺体が茨城県内の山林で見つかった。ともに下校途中を狙われ、子供の安全をどう守ればいいのか、保護者らに不安が広がった。12月10日には、京都府宇治市の小6女児が学習塾で講師の大学生に刺殺された。高校1年生の凶悪犯罪も目立ち、両親殺害後、ガス爆発を起こした少年、同じ学校に通う同学年の女生徒を殺害した少年、母親毒殺容疑の少女らが逮捕された。 写真は、殺害された小学女児の出棺を泣きながら見送る児童ら(栃木・今市市)【時事通信社】 10位・紀宮さま、ご結婚 天皇家の長女紀宮さま(36)が11月15日、東京都職員黒田慶樹さん(40)と結婚式を挙げた。天皇家の女子の結婚は1960年の昭和天皇の五女島津貴子さん以来。黒田清子さんとなった挙式後、「さまざまなことを学び、黒田家の一人として新しい生活に臨んでまいりたい」と抱負を話した。首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」は同月24日、女性・女系天皇を容認する最終報告書を提出。この中で、皇族女子が婚姻後も皇族にとどまる必要があるとの考えを示し、政府も皇室典範の改正作業に着手したが、紀宮さまはその前に民間人になった。 写真は、結婚式後の記者会見の席上、ほほえみを交わす黒田慶樹さん(左)と黒田清子さん(東京都内のホテル)【EPA=時事】 ◇海外10大ニュース 1位・ロンドンなど世界各地でテロ 英国やエジプトなど世界各地で同時爆弾テロが相次ぎ、多数の犠牲者が出た。いずれも手口から、テロ組織アルカイダや同組織と関係のあるイスラム過激派の犯行とみられる。ロンドンでは7月7日、地下鉄と2階建てバスを標的とした4件の爆弾テロで56人が死亡。英国では主要国首脳会議(サミット)が開かれており、議長役のブレア首相は急きょロンドンに戻った。エジプトのシャルムエルシェイクでは同23日、ホテルなどで爆弾テロが起き、88人が死亡。インドネシア・バリ島でも10月1日、レストランなど3カ所で爆発が発生し、日本人1人を含む20人余が命を落とした。11月9日には、ヨルダン・アンマンのホテル3カ所で起きた同時爆弾テロで59人が死亡した。 写真は、同時テロで爆破され、屋根の部分が吹き飛んだ2階建てバス【EPA=時事】 2位・国際原油相場が高騰、一時は70ドル突破 ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場が高騰、8月30日に1バレル=70.85ドルの史上最高値をつけた。好調な米景気や中国の需要拡大などが相場を押し上げ、米南部の石油関連施設を大型ハリケーンが襲い、投機資金も加わって一段高となった。石油輸出国機構(OPEC)は増産余力に乏しく手詰まり感が台頭、国際エネルギー機関(IEA)は9月、1991年の湾岸戦争以来となる戦略備蓄の放出に踏み切った。原油高騰はガソリン価格上昇など個人の財布を直撃、世界のインフレ懸念も強めた。 写真は、ガソリンスタンドで給油する男性。ニューヨーク商業取引所の原油先物相場は28日夜の時間外取引で急騰し、1バレル=70.80ドルと初の70ドル台を記録(アメリカ・シカゴ)【AFP=時事】 3位・鳥インフルエンザ、東南アジアや中国で猛威 鳥のインフルエンザによる死者が東アジアで続出。12月までにベトナム、タイ、インドネシア、カンボジア、中国の5カ国で人への感染が確認された。死んだ鳥からは欧州でも高病原性ウイルスが検出されており、世界的な広がりを見せている。ウイルスの変異により、さらに人から人へ感染する「新型インフルエンザ」になる恐れもある。韓国・釜山で11月に開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では鳥インフルエンザ対策での国際協調が宣言された。 写真は、中国陝西省の養鶏場で、鶏に鳥インフルエンザのワクチン接種を行う保健当局者【EPA=時事】 4位・イラクで新憲法、議会選実施も政情不安定 イラク戦争後の政治復興プロセスが進展し、同国では暫定国民議会選挙(1月)、移行政権発足(4月)、国民投票による新憲法制定(10月)を経て12月15日、正式政権樹立に向けた総選挙が実施された。しかし、多数派のイスラム教シーア派主導の政治状況に少数派のスンニ派が反発を強め、宗派間対立の解消は進んでいない。武装勢力の攻撃も沈静化の兆しはなく、一般市民を巻き込んだテロが頻発。10月にはイラク戦争開戦以来の駐留米兵の死者数が2000人を超えた。 写真は、憲法草案の是非を問う国民投票に参加するためバグダッド市内の投票所を訪れ、票を入れるイラク人女性【AFP=時事】 5位・大型ハリケーン米南部を直撃 超大型ハリケーン「カトリーナ」が8月末にニューオーリンズなど米南部を襲った。ジャズの街ニューオーリンズは堤防の決壊で水没、死者は1300人超と、1928年以来最悪の被害となった。被災者救済の遅れは、イラク戦争の泥沼化と並んで支持率低迷の要因となってブッシュ政権を揺さぶった。6-11月に熱帯低気圧は26個発生し、うち13個がハリケーンに発達、「リタ」「ウィルマ」なども米本土を直撃した。 写真は、メキシコ湾岸を襲った大型ハリケーン・カトリーナの影響で水没したニューオーリンズ【AFP=時事】 6位・パキスタンで大地震、死者7万人超す パキスタン北部で10月8日、マグニチュード(M)7.6の地震が発生、同国とインド北西部を中心に死者が7万人を超える大災害となった。震源地はパキスタンが実効支配するアザド・カシミールの山岳地帯。被災地では道路や通信網が寸断され、救助活動は難航。日本や欧米諸国が救助隊を派遣する中、カシミール地方の領有をめぐって対立を続けてきた印パ両国が11月7日、実効支配線(停戦ライン)上の地点を初めて開放し、援助物資の受け渡しを開始した。 写真は、パキスタンの首都イスラマバードで、強い地震によって倒壊し、がれきの山と化したビル。パキスタン北部で日本時間8日午後1時前、マグニチュード(M)7.6の強い地震が発生した【AFP=時事】 7位・中国各地で反日デモ、大使館にも投石 4月、中国各地で日本政府の歴史認識に抗議し、国連安保理常任理事国入りに反対する反日デモが続発した。9日北京で発生した大規模デモは翌10日に広州、16日には最大の経済都市・上海のほか杭州、天津にも飛び火。インターネットでの呼び掛けに応じた若者らは「愛国無罪」を叫びながら、日本製品の不買などを主張して日系店舗を襲撃、日本大使館・総領事館に投石した。警察はデモ制止に消極的で、事態に巻き込まれ負傷する日本人も出た。 写真は、9日、北京で反日横断幕や中国国旗を振りかざしながら、日本の国連安保理常任理事国入りなどに反対するデモを行う市民ら。日本の国連安保理常任理事国入りや歴史教科書検定に抗議する若者を中心に5000人規模の反日抗議行動があった。若者らは横断幕を持ち、「日本軍国主義を打倒せよ」「日本製品をボイコットせよ」「釣魚島(日本の尖閣諸島)から出て行け」などと叫んで気勢を上げ、日本車に向かって物を投げた。首都の北京市でこれだけ大規模な反日デモが起きるのは極めて異例。新華社が反日デモを報じたが、これも極めて異例という【AFP=時事】 8位・中国、人民元切り上げ 中国政府は7月21日、人民元切り上げなどを柱とする外国為替制度改革を9年ぶりに実施した。急増する貿易黒字に米国など国際社会から批判が集中。1ドル=8.27元近辺でほぼ固定されてきた相場を同8.11元に切り上げ、1日当たり上下0.3%の変動を許容することにした。本格的な変動相場制度への第一歩として期待が高まったが、その後の相場変動はわずかな幅にとどまり、当局が介入を続けているとの批判が根強い。 写真は、中国江蘇省海安の金融機関で紙幣を数える女性。手前に山と積まれているのは故毛沢東主席をあしらった100元紙幣の束【EPA=時事】 9位・ローマ法王ヨハネ・パウロ2世死去 東西冷戦下、社会主義国の民主化勢力を支援する「バチカン外交」を進め、現代史に大きな足跡を残したローマ法王ヨハネ・パウロ2世が4月2日、バチカン(ローマ法王庁)で死去した。84歳だった。26年5カ月余の在位期間中、世界約130カ国を訪問し、「空飛ぶ法王」と呼ばれ、「ベルリンの壁」崩壊を頂点とする冷戦終結劇では、祖国ポーランドを含む東欧の民主化運動の精神的支えともなった。後継者を決める選挙会議「コンクラーベ」は4月19日、ドイツ出身のヨゼフ・ラツィンガー枢機卿を選出、同枢機卿はベネディクト16世として第265代法王に即位した。 写真は、バチカン市内のサンピエトロ広場で営まれたローマ法王ヨハネ・パウロ2世の葬儀【EPA=時事】 10位・イスラエル、ガザから撤退 イスラエルは8月から9月にかけ、パレスチナ・ガザ地区の全入植地撤去と同地区駐留部隊の完全撤退を実現し、1967年の第3次中東戦争以来38年間に及んだ軍事占領が終結した。93年のオスロ合意に基づく中東和平プロセスが停滞を余儀なくされる中、シャロン首相が国内の治安維持などを考慮して決断。ただ、パレスチナ側は撤退後も地区内の空港などを自由に使えないほか、対エジプト境界の検問所でもイスラエル側が遠隔監視を続けるなど制約は多い。パレスチナでは、撤退後も過激派による自爆テロやイスラエル側との衝突が相次いでおり、自治政府の統治能力が問われている。 写真は、パレスチナ・ガザ地区のユダヤ人入植地、ネベデカリムを見渡す高台にたって、感慨深げに別れを告げる入植者家族。21個所あるガザ地区の入植地のうち、すでに6個所が撤収完了となった【AFP=時事】
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