誰でもなる可能性がある
現在、日本人の2人に1人は一生のうちに何らかのがんになるといわれています。がんは、すべての人にとって身近な病気です。しかし、ひと口にがんといっても、その病状や経過は、がんの種類やがんが見つかったときの状態などによって異なり、人によってさまざまです。
「がん情報サービス」では、がんに関連するさまざまな情報を紹介しています。世の中にはたくさんのがんの情報がありますが、がんという病気について知りたいときには、まず、「がん情報サービス」で自分の状況に合った確かな情報を確認しましょう。
図1累積罹患リスク・累積死亡リスク2020年データに基づく累積罹患リスクおよび2022年データに基づく累積死亡リスク国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」より作成用語集累積罹患リスク累積死亡リスク関連情報がんの種類ごとの罹患数の順位など最新のがん統計を公開しています。最新がん統計(がん統計サイト)がんに関連する確かな情報を幅広く掲載している「がん情報サービス」と、がん相談の専門家に誰でも無料で相談できる「がん相談支援センター」について紹介しているちらしです。もしも、がんになったら(2022)治療で不安なこと、痛みやつらさ、治療費のことなど、がんに関するさまざまな相談に対応する窓口について紹介しています。がんの相談完全に防げるわけではないが、なりにくくすることはできる
生活習慣や感染など、さまざまな要因でがんになると考えられています。現在のところ、日本人を対象とした研究では、喫煙(受動喫煙を含む)、過度の飲酒、塩分や塩辛い食品をとりすぎる・野菜や果物をとらない・熱すぎる飲み物や食べ物をとるなどの食生活、太りすぎ、痩せすぎ、運動不足、ウイルスや細菌への感染ががんの要因になるとされています。
がんを完全に防ぐことはできません。しかし、禁煙、節酒、食生活の見直し、体を動かす、適正体重の維持といった生活習慣の見直しや、がんの原因となることが分かっているウイルスや細菌への対策などによって、がんに「なりにくくする」ことはできます。
関連情報日本や海外の研究結果から科学的に明らかにされているがんの発生要因について紹介しています。がんの発生要因「病名から探す」に掲載しているがんごとの発生要因について、リンクをまとめて紹介しています。それぞれのがんの発生要因科学的根拠に基づいた日本人のためのがんの予防法について紹介しています。科学的根拠に基づくがん予防たばことがんの関係や関連する情報について紹介しています。たばことがんがんという病気そのものはうつらない
がんは、遺伝子が傷つくことによって起こる病気です。一部のがんの発生にはウイルスや細菌への感染が関係している場合がありますが、がんという病気そのものが、咳せきやくしゃみなどの飛沫や、他人との接触などによって、人から人に直接うつることはありません。
高齢化の影響を除くと、がんによる死亡は減っている
がんになる人の数とがんで死亡する人の数はいずれも年々増加していますが、その主な理由は、人口全体に対する高齢者の割合が増えていること(高齢化)です。高齢化の影響を除いたときの、一定期間中にがんになる人の割合(年齢調整罹患率)は、2010年ごろからほぼ横ばいに、がんで死亡する人の割合(年齢調整死亡率)は1990年代半ばをピークに減少しています。
治療法の進歩などにより、がんにかかった人の生存率は、多くの部位のがんで向上する傾向にあります。すべてのがんを完全に治す(根治する)ことができるわけではありませんが、根治を目標とした治療を受けたあと、定期的な検査を受けながら、転移や再発をすることなく生活している人はたくさんいます。また、転移や再発をした場合でも、治療を受けながら社会生活を続けている人は少なくありません。
用語集転移再発関連情報年次推移1.年次推移のまとめ(がん統計サイト) 年次推移4.がんの生存率(がん統計サイト)がんで死亡するリスクは、科学的根拠に基づくがん検診を受けることで下げられる
がんの種類にもよりますが、一般的に、がんは進行するとより治りにくく、また、がんそのものやがんの治療による体への負担もより大きくなります。科学的根拠に基づくがん検診を受けることでがんを早い段階で発見し、適切な治療を受けることが可能になります。
がん検診には、受診することによる利益(がんによる死亡のリスクの減少)だけではなく、放射線被ばくなどの不利益もあります。利益(メリット)と不利益(デメリット)のバランスを科学的根拠に基づいて吟味し、国が推奨しているのは、現在(2023年)、大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、子宮頸けいがんの5つのがん検診です。
関連情報がん検診の流れなど、がん検診に関連する情報を紹介しています。がん検診についてがん検診について知っておきたいポイントを、5つのがん種ごとにコンパクトなちらしにまとめて紹介しています。がん検診をこれから受ける方、受けた方へ(2023)2.がん(悪性腫瘍)と良性腫瘍細胞の中にある遺伝子は、それぞれ決められた役割をもって働いています。その役割の1つが、細胞の増殖とその抑制です。正常な細胞は、体や周囲の状態に合わせて遺伝子が適切に働くことにより、増えたり、増えることをやめたりしています。
正常な細胞が分裂するときなどに、偶然、遺伝子に「傷」が生じることがあります。また、この傷は、喫煙、ウイルスや細菌などの感染、さまざまな化学物質、放射線などの外的要因によって生じることもあります。この傷のことを遺伝子の「変異」といいます。さまざまな原因で生じた遺伝子の変異によって、細胞が無秩序に増え続けるようになることがあり、このようにしてできた細胞のかたまりを「腫瘍」といいます。
腫瘍は、腫瘍をかたちづくる細胞の増え方や広がり方の違いから、大きく悪性腫瘍と良性腫瘍に分けられます。悪性腫瘍は、細胞が無秩序に増えながら周囲にしみ込むように広がったり(浸潤しんじゅん)、血管などを介して体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったり(転移)する腫瘍です。放っておくと全身に広がり、体にさまざまな悪い影響をもたらすため、ほとんどの場合、治療が必要になります。悪性腫瘍のことを「がん」ともいいます。
一方、浸潤や転移をすることがなく、周りの組織を押しのけるようにしてゆっくりと大きくなる腫瘍を良性腫瘍といいます。良性腫瘍には、生涯にわたって症状がでないものや、生命に影響を及ぼさないものもあります。このため、腫瘍のできた場所や大きさ、種類などを総合的に判断し、必要に応じて手術(外科治療)を行います。多くの場合、完全に取りきることができれば再発することはありません。
3.がんの分類がんは、がんが発生した細胞の種類によって、癌※や肉腫、造血器腫瘍(血液のがん)などに分類されます(表1)。
表1がんの分類分類発生する細胞がんの例特徴固形がん癌※体の表面や臓器の粘膜などを覆っている細胞(上皮細胞)大腸癌、肺癌、胃癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肝細胞癌など周囲にしみ込むように広がる(浸潤)体のあちこちに飛び火して新しいがんのかたまりを作る(転移)かたまりで増える肉腫骨や筋肉などを作る細胞骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、未分化多形肉腫、粘液線維肉腫、平滑筋肉腫など造血器腫瘍(血液のがん)白血球やリンパ球などの、血管や骨髄、リンパ節の中にある細胞白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などかたまりを作らずに増える悪性リンパ腫ではかたまりができ、リンパ節などが腫れることがある※ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全体を指し、漢字の「癌」は上皮細胞から発生する悪性腫瘍に限って使うとされていますが、特に区別しないこともあります。本表以外の「がん情報サービス一般の方向けページ」では、原則として、「癌」についてもひらがなの「がん」を使っています。4.がんの発生と進行がんの発生と進行について、図2でイラストを使って説明します。多くのがんは、以下の①~⑤の段階を経て発生、進行することが分かっています。
図2がんの発生と進行①正常な組織②正常な組織の中に、遺伝子が傷ついた(変異した)異常な細胞ができる③異常な細胞の中で複数の遺伝子の変異が蓄積して増殖が止まらなくなり、腫瘍(かたまり)を作る④浸潤:異常な細胞が、基底膜(上皮と間質の境目にある膜)を越えて広がる⑤転移:血管などに入り込んで全身に広がる※上皮に発生したがんがまだ上皮内にとどまっていて、基底膜を越えていないとき、これを上皮内がんといいます。がん細胞が、血管などが多い間質に達していないため、転移していることはほとんどありません。がん細胞は、細胞の遺伝子に変異が生じることによって発生しますが、正常な細胞ががん細胞になり、浸潤、転移をするようになるまでには、ほとんどの場合、複数の遺伝子変異が必要です(多段階発がん)。これらの遺伝子変異は一度に生じるわけではなく、時間をかけて徐々に蓄積していくことが分かっています。高齢になるとがんになりやすくなるのはこのためと考えられます。
5.がん遺伝子とがん抑制遺伝子変異はさまざまな遺伝子で起こりますが、変異が生じたときに、特にがんの発生につながりやすい遺伝子があることが分かっています。
細胞の中にある遺伝子は、それぞれ決められた役割をもって働いています。その役割の1つが、細胞の増殖とその抑制です。このような役割をもつ遺伝子に変異が生じると、細胞の増殖をコントロールすることができなくなるため、がんが発生しやすくなります。このような遺伝子には、「がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」があります。名前に「がん」とついていますが、いずれもがん細胞だけにあるわけではなく、正常な細胞にもある遺伝子です。
がん遺伝子
細胞を増やす役割をもつ遺伝子に変異が生じると、細胞がどんどん増えて止まらなくなり、がんの発生につながることがあります。このような遺伝子を「がん遺伝子」と呼びます。
がん遺伝子には、EGFR遺伝子、HER2遺伝子、RAS遺伝子など、たくさんの種類があることが分かっています。変異を起こしたがん遺伝子から必要以上にタンパク質が作られたり、変異のあるタンパク質が作られたりすることにより、細胞が無秩序に増殖します。このようなタンパク質などを標的とする薬物療法の研究、開発が進められ、一部のがんでは標準治療になっています。最近では、遺伝子変異などのがんの特徴に合わせて、一人ひとりに適した治療を行う個別化治療も行われています。
用語集標準治療がん抑制遺伝子
一方、細胞が増えるのを抑えたり、遺伝子の変異を修復したり、異常な細胞を排除したりする役割をもつ遺伝子もあります。これらの役割をもつ遺伝子に変異が生じると、細胞の異常な増殖を抑制することができなくなり、がんの発生につながることがあります。このような遺伝子を「がん抑制遺伝子」と呼びます。
がん抑制遺伝子には、TP53遺伝子やRB遺伝子、BRCA1/2遺伝子などがあります。がん抑制遺伝子についての研究も進められており、標準治療となる薬物療法が開発されているほか、がんの予防や早期発見などにつながることが期待されています。
関連情報遺伝子や、遺伝子とがんとの関わりなどについて、紹介しているページです。がんゲノム情報管理センター遺伝子とがんの関わりがんゲノム医療もっと詳しく5.もっと詳しく:ゲノムとは、遺伝子とは遺伝性腫瘍変異を起こしたがん遺伝子や、そのような遺伝子をもとに作られたタンパク質などを標的とする薬物療法について紹介しています。がん医療における遺伝子検査もっと詳しく1.個別化治療とがん遺伝子検査薬物療法もっと詳しく2.薬物療法で使われる薬の種類3)分子標的薬癌治療学会が公開している一般向けのミニ講座です。日本癌治療学会がん治療の案内板大人のがん講座学校でのがん教育をサポートするために文部科学省が作成、提供している教材です。がんという病気や、がんに関連するさまざまな情報について掲載されています。文部科学省がん教育推進のための教材(令和3年3月 一部改訂)作成協力
関連情報編集委員・作成協力者・作成委員2.作成協力者(団体・個人)がんという病気について更新・確認日:2024年09月02日 [ 履歴 ]履歴2024年09月02日「図1累積罹患リスク・累積死亡リスク」を更新(累積罹患リスク2020年のデータを反映、累積死亡リスク2022年のデータを更新)2023年08月08日「がんという病気について」を「細胞ががん化する仕組み」と統合して更新しました。2022年09月15日「図1累積罹患リスク・累積死亡リスク」を更新(累積罹患リスク2019年のデータを反映、累積死亡リスク2020年のデータを更新)2021年08月27日「図1累積罹患リスク・累積死亡リスク」を更新(累積罹患リスク2018年のデータを反映、累積死亡リスク2019年のデータを更新)2021年04月22日内容を更新し、タイトルを「がんという病気について」としました。2020年10月21日「3.がんの種類と名称」を更新しました。2020年10月12日「5.信頼できる情報と窓口」の関連情報に「日本癌治療学会がん治療の案内板大人のがん講座」へのリンクを掲載しました。2020年08月11日「4.がんの検査と治療」を更新しました。2020年07月08日図「罹患リスク・死亡リスク」を更新(累積罹患リスク2017年のデータを反映、累積死亡リスク2018年のデータを更新)2020年04月15日図「罹患リスク・死亡リスク」を更新(累積罹患リスク2015年、累積死亡リスク2018年のデータを反映)2018年09月20日図「罹患リスク・死亡リスク」を更新(累積罹患リスク2014年、累積死亡リスク2016年のデータを反映)2018年01月25日「3.がんの種類と名称」の内容を更新しました。2017年09月20日図「罹患リスク・死亡リスク」を更新(累積罹患リスク2013年、累積死亡リスク2015年のデータを反映)2016年07月26日図「罹患リスク・死亡リスク」を更新(累積罹患リスク2012年、累積死亡リスク2014年のデータを反映)2015年06月19日図「罹患リスク・死亡リスク」を更新(累積罹患リスク2011年、累積死亡リスク2013年のデータを反映)2014年10月07日「悪性腫瘍(がん)とは」の内容を混成し再編集2014年01月23日書籍情報を更新2012年12月12日掲載閉じる