更新日:2024.8.12
上司、トレーナーにとって「部下育成」は非常に重要な役割の一つです。
しかし、いざ指導する立場になったとき、「具体的に何をすればいいのか分からない…」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、部下育成に悩んでいるトレーナーの皆様へ、効果的な3つのコミュケーションプロセスをご紹介します。
3つのコミュニケーションプロセス「相互理解→相互支援→相互成長」プロセスに沿って部下育成行い、相互に刺激を与えあえる関係を目指しましょう。
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執筆者プロフィール 迫間 智彦 X:@tohaza_atcyoutube:中小企業の人材育成・組織変革 専門チャンネル大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。専門性:ファシリテーター、管理職、組織開発・組織変革
目次
1)なぜ「相互理解→相互支援→相互成長」が必要なの?部下育成に悩むトレーナーは多い3つの流れが意識できると「信頼→モチベーションアップ→成長スピードの向上」の波に乗れる2)「相互理解→相互支援→相互成長」のコミュニケーションを取るメリット信頼感が生まれ、本音を言える関係性が構築される部下のモチベーションアップにつながる部下の成長が促進される3)それぞれの意味と重要なポイント質の高いコミュニケーションが重要な「相互理解」共通ビジョンが重要な「相互支援」上司の成長が重要な「相互成長」4)3つの相乗効果によって、“成長”が仕事の成果に繋がりやすくなる成果を出すために不可欠な「成功の循環モデル」「相互理解→相互支援→相互成長」を行うことで成功の循環モデルの流れにも乗ることができる5)まとめ ―成長する組織は学ぶことを止めない1)なぜ「相互理解→相互支援→相互成長」が必要なの?今回ご紹介するのが「相互理解→相互支援→相互成長」の3つのプロセスです。
それぞれ言葉の意味を何となくは理解できても、部下育成の場でうまく活用できていない方もいらっしゃるかと思います。
この3つのプロセスが部下や自分自身、そして会社にとってどのようなメリットをもたらすのか。 また、この3つのプロセスを正しく理解し、育成の場で活用するにはどうすればいいのか。
順を追って見ていきましょう。
部下育成に悩むトレーナーは多い冒頭で述べたように、部下の育成に悩んでいるトレーナーの方は多いです。その多くが「部下とのコミュニケーションの不和」や「上司と部下間での捉え方の相違」などが原因となっています。
例えば、部下の成長を促すために、よかれと思って厳しめのフィードバックをする。しかしそれが部下には伝わらず、関係が悪くなってしまったり、はたまた「パワハラ」と言われてしまったり。あくまで「対等な立場で接しよう」と試みていたとしても、そもそものコミュニケーションの方法に誤りがあった場合、その思いを部下に届けることは難しいかもしれません。
「最近、部下とうまくコミュニケーションが取れていない」と思った時にこそ、今一度「相互理解→相互支援→相互成長」のプロセスが行えているか見直すいい機会です。
この3つのプロセスを正確に行うことによって、それまでのような「部下とのすれ違い」を防ぐばかりか、その先の「成長」にも繋げることが可能になります。
3つの流れが意識できると「信頼→モチベーションアップ→成長スピードの向上」の波に乗れるでは、それぞれのプロセスによってどのような効果が期待できるのか見ていきましょう。
まずは「相互理解」について。相互理解とは、言葉の通り互いに理解を深めていく行為です。それにより、上司と部下の間の信頼関係を構築させていくことができます。
続いて「相互支援」。互いに支えあい、チームワークを形成していきます。相互支援が高まると、部下のモチベーションアップにも期待できます。
そして最後が「相互成長」。部下だけが成長するのではなく、上司も共に成長し続けることが大切。 自身の育成によって上司自身も学んでいると部下が認識できることによって、お互いや組織全体の成長スピードも格段に上がるのです。
「相互理解→相互支援→相互成長」のプロセスは互いに関わりあっています。各プロセスを高めることにより、他のプロセスの効果も増していくのです。
例えば、相互理解がされ、信頼感の強い組織は、社員一人一人のモチベーションも高く、より互いを支援することができます。そして、一人一人の成長も繋がります。そして3つのプロセスを強化することで「信頼→モチベーションアップ→成長スピードの向上」の好循環に乗ることもできます。
続いての章ではこの3つのプロセスがもたらす信頼・モチベーションアップ・成長スピードの向上についてさらに詳しくひも解いていきましょう。
2)「相互理解→相互支援→相互成長」のコミュニケーションを取るメリット部下育成には「相互理解→相互支援→相互成長」のプロセスが大切とお伝えしましたが、それぞれのプロセスを深めていくことで、どのような効果が期待できるのでしょうか。
それぞれのプロセスが組織にもたらす効果と、実際に取り組むにあたって大切にしたいポイントをご紹介します。
信頼感が生まれ、本音を言える関係性が構築される上司と部下は立場も年齢も異なるため、コミュニケーションの場面で行き違いが起こってしまいがちです。そんな時に意識していただきたいのが「相互理解」――つまり、お互いに理解しあうという行為です。相互理解が深まることで、信頼関係が構築されていきます。
反対に、上司と部下の間の信頼関係が薄いと、どのようなことが起きるでしょうか?
例えば、ある会議の場面。上司の立場としては部下の意見を聞きたいところですが、肝心の部下は口を閉ざしたまま……。信頼関係が薄いと、部下も本音を吐き出しづらくなってしまいます。
現状の部下との関係性を振り返ってみて、まだ信頼関係が築けていないと感じるならば、大切なのは「上司からの働きかけ」です。「傾聴」という言葉をご存知でしょうか。相手の話に耳を傾けるだけでなく、「熱心に」「相手を思いやりながら」聞く行為を指します。
たとえば作業の途中に部下が質問や相談をしてきたとき、きちんと作業の手を止めて部下の話を聞いてあげられていますか。 また、部下が自分で考えるための時間を設けず、簡潔に「答え」だけを提示していませんか。「傾聴」は聞き手のみならず、話し手である部下が「自分の話を聞いてくれている」と思うことで初めて成立します。さらに、部下へのフィードバックは「Iメッセージ」を意識して伝えると良いでしょう。 Iメッセージとは、メッセージの発信者の主語を明確にすることで、その結果、相手の心に残りやすい言葉となります。「〇〇さんのおかげで“私”はとても助かったよ」 「〇〇さん元気ないんじゃないかって、“俺”は心配してるよ」 そうした小さな働きかけを積み重ねていくことで部下も心を開きやすくなり、信頼関係を築いていくきっかけになるのです。
【関連記事】部下を上手く褒めるには?上司が知っておきたい伝えるスキル“Iメッセージ”とは部下のモチベーションアップにつながる近年では働き方・専門分野も多岐にわたり、忙しい時期にはついつい部下への働きかけも疎かになりがち、結果として各々が自分の仕事だけをこなしている、という状況に陥っている組織も珍しくありません。
しかし、そんな時だからこそ「相互支援」を意識することは大切です。一見、問題なく業務をこなしているように見えている部下も、実際にはモチベーションが上がらずに悩んでいる可能性もあります。 ここで必要なのが「仕事の割り振り方」です。 主に以下の二点を意識されると良いかもしれません。
・部下が自ら成長できそうな目標を設定する・部下の成長に繋がりそうな仕事を割り振る
そして、この二つを設定するにあたって、次のことを視野に入れつつ考えてみると、より効果的に部下の成長が期待できます。
もう1つは、「スィートスポット」を意識することです。
スィートスポットとは、下図の3つの円の重なりにあたる部分です。 成長前の部下は自分の強みが分からず、会社から求められている業務を、あまり情熱も持てないままこなしていることがあります。
その状態では当然、部下の成長へは繋がりません。 そこで「求められるもの」「情熱を持てること」「強みであること」の3つの円が重なるように、それぞれの項目の輪を広げていく必要があります。
「部下の情熱を上げるにはどんな仕事を任せるべきか」「部下の強みは何か」を見極める必要がありますので、部下とのコミュニケーションは不可欠です。先に挙げたような「傾聴」や「Iメッセージ」を駆使すると良いでしょう。
さらに大切なのが「褒めるべきところ」「改善すべきところ」は積極的に伝えていくことです。 良い面も悪い面もきちんと伝えていくことで、部下にとっては「自分を気にかけてもらえている」「役に立てている」という実感を持ちやすくなり、部下のモチベーションアップにも繋がっていきます。
部下の成長が促進される部下の成長を促進させるために意識したいのが「部下のレベルに応じた目標設定をする」ことです。
目標が大きすぎてしまうと実現することが困難になってしまい、結果として部下のモチベーションを下げてしまいかねません。 反対に目標が曖昧すぎてしまっても、達成した時の成長が感じづらくなってしまいます。 イメージで言うと「階段を昇っていく」ような目標設定が適切です。
目の前のステップを1つ1つクリアしていくことで、徐々に自分に自信をつけていく。 また、部下自身もゴールを見据えた行動をしやすいというメリットもあります。 人間は困難に行き当たり、その壁を乗り越えようと試行錯誤をする時に大きな成長を遂げます。そして苦労の末に壁を乗り越えた時、達成感と成長の好サイクルに入ることができるのです。
3つのプロセスにはそれぞれの効果があり、その3つが影響しあうことで組織としての成長に繋がるのです。
3)それぞれの意味と重要なポイント「相互理解→相互支援→相互成長」の3つのプロセスを意識することにより、「信頼→モチベーションアップ→成長スピードの向上」の好循環の波に乗りやすいことはお分かりいただけたかと思います。 では、実際に各プロセスを実行していく際に、どのような点を意識していくべきか。各プロセスごとにご紹介します。
質の高いコミュニケーションが重要な「相互理解」「相互理解」とは、「互いを理解し、信頼関係を深めていく」ためのプロセスです。
そのためには部下とのコミュニケーションは不可欠となります。 しかし、ただ闇雲に部下との接触回数を増やしたり、仕事を割り振れば良いというわけではありません。 そこにはある程度の「質の高い」コミュニケーションが求められます。 たとえばどの会社や組織にも「企業理念」や「目標」が掲げられているかと思います。
同じ組織・チームに属する以上、それらの「企業理念」「目標」を共有し、それに伴ったコミュニケーションを取ることは大切なことです。 しかし、あまりにビジネスに偏ったコミュニケーションでは、上司と部下の関係性もある程度「ビジネスライク」な渇いたコミュニケーションになり、そこに本音や理解は含まれにくいかもしれません。
反対に「何でも分け隔てなく言い合える環境」に重きを置きすぎた場合、「規律のない」組織になってしまう恐れがあります。ビジネスにおいて、ある程度の線引きは定めておく必要があります。 これら2つをバランスよく取り入れたコミュニケーションを行えば、お互いに理解しあい、信頼関係を深めていける組織へとなれるのです。
共通ビジョンが重要な「相互支援」チームワークの形成に効果的な「相互支援」のプロセスですが、互いに互いを支援するには、まず「共通ビジョン」を持っておく必要があります。
これは先ほども挙げたような「経営理念」や「チームでの目標」でも構いませんが、「相互支援」を行うことを目的とした新たなビジョンを設定してみても良いかもしれません。 部下育成は「教える/教えられる」という関係性に固執してしまいがちですが、上司が部下から学ぶことも多くあります。そのことに上司自身が気づけるかどうかが、「共通ビジョン」の設定によって変わります。
たとえばある部署で上司が一人の部下の研修を担当するといった場合。「この部下研修を通じて組織がどう変わっていくことが望ましいか」といった認識が組織内で共有できていなければ、残りの社員は研修の目的が分からず、組織としての成長は望めなくなってしまいます。
部下の得意分野を伸ばしてやるために周囲のどんなサポートが必要か。それを組織内で共有することで、皆が組織の一員として支援しあうことができます。 また、部下側も「自分のこのスキルによって、上司やチームの役に立つことができている」という意識が芽生えれば、より組織としての成長も高まるのです。
上司の成長が重要な「相互成長」部下育成に明確な終わりはありません。一つの目標をクリアすれば、次に伸ばしてほしいスキルが生まれてくるというのが部下育成の一つの在り方です。
そのようにして「部下が成長し続けること」はもちろん、組織にとって必要なことです。 しかしそれ以上に求められるのが「上司の成長」です。 上司の成長なくして部下の成長、ひいては組織の成長には繋がりません。なぜなら、部下育成を進めていくにあたって「上司としての反省点」は付き物であるはずだからです。 「部下が目指すべき方向を示してあげることができているか」「できていなかったとしたら、何がいけなかったのか」など、上司として常に考えていく必要があります。
そして、上司自身が内省を深め成長していこうとする姿勢から、自身の成長が組織にとって良い方向に繋がっていると部下が実感し、部下自身も自然と内省を深めていくことができます。 時には部下からフィードバックを貰う、ということも必要になるかもしれません。 そうして互いに成長を高めていける環境こそ、「成長し続ける組織」に必要な資質です。
4)3つの相乗効果によって、“成長”が仕事の成果に繋がりやすくなる「相互理解→相互支援→相互成長」の3つのプロセスによって、部下のみならず上司や組織レベルで成長が可能になることをお伝えしました。 続いて、部下や組織の成長が「成果」として反映されるにはどうしたらいいのか、「成功の循環モデル」を例にしてご紹介したいと思います。
成果を出すために不可欠な「成功の循環モデル」「成功の循環モデル」は、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した、組織が成功に向かうための4つのサイクルのことです。下記の図をご覧ください。 「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」の4つの要素があり、それらは互いに影響しあっています。 このサイクルがうまく循環しているときは組織としての成長期にあたり、反対にサイクルが滞っている場合は変革が必要な時です。
たとえば同じ組織の社員同士が信頼しあっているとき(関係の質)、一人一人の思考も前向きでモチベーションが高まっています(思考の質)。すると新しいことにチャレンジする意欲が自然と高まり(行動の質)、それが良い結果へと繋がるのです(結果の質)。 反対に職場の人間関係が希薄である場合(関係の質)、自然と考えや捉え方も一方通行で狭いものになってしまいます(思考の質)。前向きな行動もなかなか起きにくくなり(行動の質)、良い結果も生まれません(結果の質)。
組織として結果を求められる場面に直面したら、ぜひこの「成功の循環モデル」を思い出してみてください。
「相互理解→相互支援→相互成長」を行うことで成功の循環モデルの流れにも乗ることができる組織のパフォーマンス向上のカギ「成功の循環モデル」ですが、「相互理解→相互支援→相互成長」の3つのプロセスを経ることによって、好循環のサイクルに乗りやすくなります。
互いに理解し、支援し、成長しあえる環境であれば、おのずと「関係の質」が高まっている状態であり、一人一人のモチベーションも上がっているはず。その状態で新しい何かにチャレンジすれば、きっと良い結果に繋がるでしょう。
トレーナーや管理職といった立場の人間は、良い結果を求められる場面が多くあります。しかし焦って結果にばかり焦点を合わせていると、成功のサイクルに乗ることができず、これまでの行動が徒労に終わってしまう恐れもあります。 今、自分の組織が成功のサイクルに乗れているかどうか当てはめてみること、そして「相互理解→相互支援→相互成長」のプロセスも同時に意識することによって、成功に向けて何が足りていないのかが明確になり、解決へと向けた行動が可能になるかもしれません。
5)まとめ ―成長する組織は学ぶことを止めないいかがでしたか。 部下育成に効果的な3つのプロセスと「成功の循環モデル」についてご紹介しました。
実際に組織として成長を続けている企業を見ると、自然とこのプロセスを使いながら部下育成を行っています。 部下のみならず指導する側の上司も、部下育成を通して学びを続けています。 今現在、部下育成に悩んでいるトレーナーの方にとって、この記事が役立つことを願っています。
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